●雑記
久しぶりに映画を観に行った。それも渋谷にである。<オオカミの家>。ネットでちらりと見た感じでは、少しおどろおどろしい、脳髄をざらりと撫でられるような、何とも言えない感覚を覚え「これは観に行きたいな」と思わせるに十分であった。
友達に気になる映画という事で連絡した折に「じゃあ観に行こうか」と誘ってくださりチケットを取ってもらった。
どうやら都内では渋谷でのみ上映しているらしく、映画館に着くと張り紙があり、当日のチケットは完売状態であった。
「そうなのか、そんなに人気なのか」
と感心しつつ、上映終了時間を確認するとそれなりに長く「おや?」とよくよく見てみると、同時上映となっており、その作品は<骨>とあった。
「……」
まあいいかと、上映時間となり友達と劇場へ入る。最近の大型の映画館とは異なり、昔ながらというか、それでもきちんと傾斜がある落ち着いた雰囲気の、良い映画館と感じた。
そして照明が消え、いよいよ<オオカミの家>が始まる。
と思ったら表示されたタイトルは<骨>。
「そっちかい」
と思いつつも、何も情報を持っていないので、期待が膨らむ。どうやら謎のフィルムが見つかってそれを復元した、という事らしいが、どうもそれは実際の話ではなく、そういった体で作った作品の様である。
ぼろぼろのフィルムらしくノイズだらけになっており、白黒のサイレントで、ストップモーションとして作られている。「そういうの嫌いじゃないな」と観進めると、いきなり長いカタカナの名前が二名、偉そうな人とそうでもない人と出てきて、少し焦る。「これ以上名前が増えたら、理解できないかも」という不安を他所に、どうやら登場人物はもう一人の少女を含め三人での話らしい。良かった。
いや、良くない。
どうやらあらましとしては、この少女が骨を使って、前述の二名の魂を復活させるというものらしいが、すごい魔力である。その凄まじい魔力によってあっさり復活する二人だが、その途中が良く分からない事になった。
いや、復活は確かにそうだと分かったのだが、二人は五体バラバラの状態なのだ。そのバラバラの状態で少女がしばらく何かをしているのだが、何ををしているのかは、まったく分からない。しかもストップモーション作品なのに、途中着ぐるみとして少女がポーズをとるシーンがあるのだ。これが「全く分からない」事になっている。
こうして観ている者の頭をわしづかみにしたまま、作品は進む。バラバラの二人は途中、五体満足(といっていいのか不明だが)になり、少女に心臓を入れてもらう。そして一人の方と少女が、どうやら恋仲になったという事らしい。何故かは分からない。
じゃあもう一人はどうなるのか、とおもいきや、何故か牧師姿(神父かもしれないが)になって二人の結婚を見届ける事に。
「あ、思ったよりハッピーエンド系なのかな?」
違う。そうではなかった。
何故か婚姻届け的な署名シーンは、二人が名前を消すシーンとなっており、牧師はパペットの糸が切れたのか、その場に倒れ込み、ろうそくの火がついても得てしまう。
「?」
いや、いいんだ。私自身が理解できなくても、何かしらの表現だというのなら、作品をどう作ろうがその人の自由であっても問題ない。
そこへ字幕が入る。詳細は覚えていないが、何でも牧師(神父?)が二人に嫉妬して結婚を妨害したから、火をつけて燃やしてやったという。
「そこまで燃えてもいないな」
そのシーンを眺めつつそう感想をもつ。
そうして<骨>は終わっていくのだが、正直な感想としては「疲れたな」であった。そしてここで気づくのだが「そうか、今から<オオカミの家>がはじまるのだな」と、そして「休憩が欲しいな」と思うも、そのまま<オオカミの家>のタイトルが表示され、作品が進んでいく。
一言でいい。気持ちを声に出して吐露する時間が欲しかった。いわば本編がはじまった劇場の席で、今日は長い一日になりそうだと感じていた。
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